●レジャー



 それは昔、昔、島を見おろす観音さまが、まだ真っ白だった時分のことを、黒い雨の涙を流しながら、思い出していた。塗装も剥げていなくて、手すりも錆びてはいなかった、人がたくさんお参りに来る、世界一背の高いわたしを見に、次々人がやって来ると、かつては言われていたのだった。資産にものをいわせてつくられた荘厳は、決してありがたみのあるようには見えなかったけれど、そのときは、それで良かったのだ。みんなが浮かれて気づかない、ずさんな管理、気まぐれ展示、でも、これはたかが「レジャー」だから。人が来る! 高速道路で、鉄道で、飛行機で、日本中から人がやって来るぞ! わたしたちはたしかにこのときを、たくさんのお客を迎えて過ごした、そう、長くは続かなかったときを。未練は無くとも、風化が進んでゆく。取り壊される日の来るまで、同じ海岸線を見守っている。今ではボロのわたしを、より不気味たらしめているものは、わたしがかつて、一個人の具体的な夢であったという事実の方だ。ひとりの人間の夢とは、そもそもこんなにいびつなもの。だからそれは決して、わたしが今こわれているから、ではなくて……。