●右耳がずっと聞こえない(片耳難聴エッセー)



 わたしは物心ついたときから片耳難聴で、子どもの頃からずっと右耳が聞こえない状態にある。どれくらい聞こえないのか。今、静かなところにいる方は、親指と人差し指をくっつけて、耳元へ近づけてから、二つの指をすり合わせてみてほしい。意外にも大きな音がするはずだ。わたしの右耳には、その音がまったく聞こえない。また、会社員や学生が受ける一般的な聴力検査では、高音も低音も一切聞こえないから、いつまで経ってもボタンを押すタイミングがやって来ない。代わりに、検査をする係が慌てて、これでもかとカチャカチャ機械を操作する音が、左耳から聞こえてくる。さすがにイヤフォンでメタルを聴いたくらいの大きな音ならば、右耳でもぼんやりと聞こえるけれども、常にそんな大きな声で話す人間が身近にいたら、さすがにうるさすぎる。そう、なんという皮肉だろう、半分聞こえていないにもかかわらず、わたしはうるさいものが嫌いなのだ。絶えずテレビ番組を流しっぱなしの部屋ではストレスが溜まってしまうので、自宅にはテレビを置いていない。渋谷のスクランブル交差点を渡るときには、うるせえうるせえといつも文句を言っている。あれを両耳で聞いたら、このうるささも二倍になるのだろうか? 「聞こえない」と「聞こえる」のどちらにも接点があるだけに、中途半端な立場に置かれている。


他タイトル一覧
■〜はじめに〜右耳がずっと聞こえない
■一生右耳が聞こえないと悟ったときの衝撃
■治らなくてもいい、治さなくてもいい、治らないんだけど
■「聞こえません」が言えない
■超健康なのに《要再検査》になる健康診断はクソ
■もう《聞こえないわたし》を幽閉しない
■片耳難聴がイヤフォンで音楽を聴くとどうなる?
■世界で一番わたしの片耳難聴を心配する人物について
■実はかなり聞こえてなかったっぽい
■カミングアウトは誰のためでもない
■耳鳴りは幽霊の仕業
■森永の珈琲牛乳プリン
■「聞こえる」と「聞こえない」のはざまで〜おわりに〜



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